

我が国の不動産環境が大きく変化し、現在、不動産の証券化が注目を浴びている。
1980年代後半のバブル経済期においては、土地の値上益を期待し、流動性のない資産である不動産に投資資金が集中した。
土地は必ず値上がりするという、いわゆる土地神話がこの根底にあった。
しかし、現在、このような土地神話は崩壊し、多くの金融機関や不動産事業者には投資不動産等が不良資産や不良債権として残された。
そのため、バブル後遺症や不動産市場の不況の下、リスク負担能力や資金調達力が大幅に低下した不動産事業者にとって、これまでの不動産への投資形態を改め、不動産の証券化・流動化による資金の調達と不動産市場の活性化が喫緊の課題となっており、その方策として、我が国においても、不動産証券化が注目を集めている。
従来、我が国では、民法上の組合、商法上の組合、信託等が不動産共同事業又は不動産証券化等のビークルとして利用されてきたが、本格的な利用には至らなかった。
しかし、資産証券化を目的とする「特定目的会社による特定資産の流動化に関する法律」に基づく「特定目的会社(通称SPC)」が創設され、その後当該SPCを中心に不動産証券化が急速に進展し、新たな不動産ビジネスとして注目を集めている。
さらに、このSPCは、本年5月23日の改正によって、より使い勝手の良いスキームとなると同時に、新たに「特定目的信託制度(SPT)」も創設された。
また同日、1998年12月から登場している「金融システム改革のための関係法律の整備等に関する法律」に基づく「証券投資法人(いわゆる会社型投信)」も改正され、「投資法人」と名称が変更され、新たに不動産投資を行える投資法人(会社型不動産投信)も認められることになった。
これらにより、米国において不動産証券化のビークルとして活況を呈しているリートに極めて類似した待望の日本版リートが我が国にいても本格的に登場することになった。
我が国において進展しつつあるこの不動産証券化の多くは、米国における不動産の証券化をモデルとしている。
米国においては、1980年代、パートナーシップを用いた不動産投資に人気があった。
しかし、1980年代後半から1990年代初めにかけてその投資は下降していった。
その理由の一つに、受動的である不動産投資によって生じた損失を投資家の「その他の所得(例えば、給与)」と損益通算することができなくなる(パッシブ・アクティビテイ・ロス・ルール)など、節税をインセンテイブとした不動産投資パートナーシップ等のタックス・シェルターに対する税務上の規制を強化した1986年税制改革法があった。
その他、タックス・プランニングの観点ではなく純粋な事業という観点から、不動産供給が過剰となり不動産価値が極端に下落したことや、金融機関が不動産ポートフォリオにおいて大きな損失を被ったことがあげられている。
その結果、投資家は、不動産市場に有利な取引物件があろうとも、これらの資産を購入することができるような資金を調達することは困難となり、市場から遠ざかっていった。
しかし、その後の金融技術の進歩等は目ざましく、それらを背景に従来の不動産投資に比べ、はるかに流動性が高い不動産投資が登場した。
その代表的なものがリート(Real Estate Investment Trust;REIT)である。
このリートの普及と発展により、多くの投資家が株式投資と同様の感覚で、不動産投資に資金を投入するようになり、リートに対する投資は魅力的なものとなっている。
特定目的会社(SPC)・特定目的信託・投資法人は米国における「リート」に類似し、また我が国の不動産特定共同事業における任意組合・匿名組合型は米国における「不動産投資パートナーシップ」に類似している。
しかし、我が国において不動産の証券化のビークルとして用いられようとしている任意組合及び匿名組合についての税務上の取扱いに関しては、我が国税法において直接的規定はなく、法人税基本通達及び所得税基本通達等の国税庁長官通達で若干の取扱いが規定されているのみであり、その内容も昭和20年代に創設されたままである。
また、当時の匿名組合と、現在、不動産の証券化において用いられようとしている匿名組合とでは、時代背景も異なり、その内容も大きく異なっているように思える。
そのため、匿名組合を用いた証券化において、前述の長官通達を拠り所として、匿名組合を節税手段とすることは極めてリスクが大きいといえる。
なぜなら、その通達が前提としている匿名組合と、現在、証券化の手段として用いられはじめている匿名組合とでは前提が異なるという見解があり、その見解は有力と思えるからである。
米国では、パートナーシップについて、内国歳入法、財務省規則及び判例等で多くの取扱いが明確化されており、我が国とでは大きく異なる。
また、1998年に創設された特定目的会社(SPC)等についても、同時に税法でその取扱いが整備されているが、創設されたばかりであり、これをビークルとした証券化が進展するにつれて、税務上の課題も今後生じてくるであろう。
不動産の証券化を進展させることは、我が国における今後の不動産市場及び経済活動の活性化を考えれば、極めて重要なことであり、その進展を促進するため、タックス・インセンテイブを備え、かつ、過度の節税とならないような「健全で精綴な税制」の整備が望まれる。
そのため、今後更なる発展を続けるためには、不動産証券化に係る法務と税務を更に整備することが喫緊の課題であろう。
不動産証券化の概要現在、我が国においては、種々のスキームにより不動産の証券化が進められている。
不動産証券化とは、一般的に、資金調達者(企業等)にとっては当該企業等が保有する証券化対象資産(不動産等)を当該企業から切り離し(オフバランス化)、その資産が生み出すキャッシュ・フローを償還の原資として元利・配当等の支払を扱う商品を発行する金融手法であり、投資家にとっては、不動産証券化商品を取得し、不動産の管理及び処分から上がる収益の分配を受ける仕組みである。
不動産証券化を、不動産の活用という側面からみると、従来の不動産投資に多く見られた、不動産投資と運営管理機能を同一の主体で処理し、なおかつ、その事業主体が金融機関から間接金融で資金調達を行い、事業リスクを負担するという伝統的な仕組みとは異なる仕組みとして捉えられる。
すなわち、不動産証券化は、この一体化していた不動産投資と運営管理機能を分離させ、不動産及びその関連資産に着目して直接市場から資金を集める、すなわち直接金融の途を開くとともに、投資に伴う事業リスクを広く分散させる一方で、投資家にとっては、保有する金融資産を一層活用させるものとして捉えることができる。
マスコミ報道等では、かなり広い意味で「不動産証券化」という言葉が使用されており、「不動産流動化」や「不動産小口化」との区別があいまいであり、「不動産証券化」という言葉は、不動産及びその関連資産をベースとして作成された証券という形をとる資産を指すものとして幅広く使用されている。
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